東日本橋レディースクリニック

東日本橋にある駅チカクリニックです。診察中には説明しきれない事を中心に女性医療に関する事を書いています。

妊娠中の盲腸の診断方法

以前、妊娠中に盲腸=虫垂炎になった場合の治療法についてまとめました。

 

https://www.obgyne.work/entry/2019/10/17/071249

 

今回は、治療の前の段階の診断方法についてまとめたいと思います。

 

妊娠していない時には、CT検査で診断を付けることも多いのですが、妊娠中には被ばくの問題もあり、CT検査はややハードルが高くなります。そこで、CTと同じような画像検査で被爆の問題もないMRI検査を検討することになります。

 

今回は、妊娠中の虫垂炎を中心にMRI検査の有用性についての論文をまとめてみたいと思います。

 

まずはこちら。

Clinical utility of magnetic resonance imaging in the evaluation of pregnant females with suspected acute appendicitis. - PubMed - NCBI

こちらの論文では、虫垂炎が疑われた妊婦さんにMRIを使うことの有用性について評価しています。

 

妊娠中に虫垂炎を疑ってMRIを行った時の虫垂炎の確率と、虫垂炎ではなかった場合を検討していて、対象となったのは、17~47歳の虫垂炎を疑われてMRIを撮った妊婦さん212名です。

 

その結果、15名(7.3%)はMRIにて虫垂炎の診断とされ、14名は手術によって虫垂炎であることが確定しました。もう1人は、回盲部憩室炎という虫垂炎に非常に似ている病気でした。

 

残りの189人は、外科的にも経過観察の中でも虫垂炎の診断とはなりませんでした。

 

このことから、陰性的中率は100%であり、陽性的中率は93.3%でした。つまり、MRI虫垂炎が否定されれば、100%虫垂炎ではなく、MRI虫垂炎の診断がつけば、93.3%虫垂炎であると言える結果でした。

感度は100%、特異度は99.5%ということになります。これは、虫垂炎ではない人は、100%MRIで否定される、ということであり、虫垂炎である人は、99.5%の確率でMRIで診断がつく、ということを意味しています。

虫垂炎ではなかった189人のうち、91人(44.2%)は腹痛を訴えていて、内訳としては、変性筋腫(子宮筋腫の中の組織が壊死してしまうこと)が11人、水腎症(腎臓から膀胱へとつながる尿管が圧迫されて腎臓が腫れること)が12人、胆石症が6人、腎盂腎炎が3人でした。

 

このように全体で200人ちょっとと少し人数は少ないものの、妊娠中の腹痛に対してMRIを使うことはかなり高率に虫垂炎の診断がつけることができ、虫垂炎ではなかった場合も、他の疾患の診断に有用であることがわかります。

 

そこで、もう少し検討人数を増やした論文もご紹介したいと思います。

それがこちら。

A Systematic Review and Meta-Analysis of Diagnostic Performance of MRI for Evaluation of Acute Appendicitis. - PubMed - NCBI

こちらの論文では、子供と妊婦さんに虫垂炎の診断のためのMRI検査を行った場合の診断精度について、複数の論文をまとめて評価しています。

対象となったのは、30の論文で、2665名の小児・妊婦さんが含まれています。

 

MRIにて虫垂炎の診断を試みたところ、感度・特異度ともに96%でした。妊婦さんに限って評価してみても、感度94%、特異度97%、小児に限って評価しても、感度・特異度ともに96%と非常に高い結果でした。

 

MRIの有用性を示す論文をもう一つご紹介します。

Diagnostic performance of MRI for pregnant patients with clinically suspected appendicitis. - PubMed - NCBI

こちらの論文では、臨床的に虫垂炎を疑われた125人の妊婦さんを対象にMRIの有用性を評価しています。

 

その結果、MRIの感度は100%、特異度は95%という結果でした。

また、DWIというMRIの撮影方法に関して、その有無によって評価したところ、DWIのないMRIを撮った72人では、感度100%、特異度94.7%であり、DWIありのMRIを撮った53人では、感度100%、特異度95%と、DWIという撮影方法の有無ではほとんど結果は変わりませんでした。

 

以上の事から妊娠中の虫垂炎の診断にはMRIが非常に有用であることがわかります。

 

最後に、妊娠中に比較的容易に検査できる超音波検査についての論文も見てみたいと思います。超音波検査は妊娠していない時の虫垂炎の診断には比較的有用なのですが、妊娠中はどうなのでしょうか。

 

The diagnostic accuracy of ultrasound in the diagnosis of acute appendicitis in pregnancy. - PubMed - NCBI

こちらの論文では、妊娠中の虫垂炎の診断にとって、超音波検査の正確性を評価しています。

対象となったのは、妊娠中に虫垂切除術を受けた90人の妊婦さんです。

 

平均年齢は31.3歳で、右下腹部痛は99%に認められました。

妊娠していない女性では、53.3%にCTが撮られていて、45.6%にエコーが行われていました。

そして、実際に手術を受けた妊婦さんのうち、31.1%は虫垂炎ではなかったのです。つまり、術前の検査にて虫垂炎が疑われて手術をしたのに、実際は違った方が3割もいたのです。

この論文ではMRIをやっていないために、虫垂炎の診断の正確性が非常に低くなっている可能性が考えられます。

 

Accuracy of ultrasonography in diagnosing acute appendicitis during pregnancy based on surgical findings. - PubMed - NCBI

こちらの論文でも妊娠中の虫垂炎の診断にエコーが有用かどうかを検討しています。

対象となったのは、妊娠中に虫垂炎の手術を受けた58人の妊婦さんです。

 

一般的に虫垂炎があると、白血球という数字が高くなるのですが、妊娠中にはもともと白血球が高くなりがちで、この論文でも虫垂炎患者と正常妊婦さんの白血球の平均値に明らかな差はありませんでした。

超音波検査に関しては、妊娠初期には感度92%、特異度66.7%、妊娠中期には感度63.7%、特異度75%、妊娠後期には感度50%、特異度100%という結果でした。

いずれも、他の論文のMRIでみられたような感度・特異度ともに90%を超えるデータから見ると劣る結果となっています。

 

以上の事から、妊娠中に虫垂炎が疑われる場合には、MRI検査が非常に有用である、と言えます。

もちろん、妊娠中のMRI検査の歴史は比較的新しいため、長期的にみた場合の子供への影響はわからない部分はありますが、エコーは精度が劣り、CTは被ばくの問題がある点で、MRIを選ぶことは十分なメリットがあるでしょう。