今回は
性格が変わってしまう卵巣腫瘍
について説明したいと思います。
正直、私自身は10年以上産婦人科医をしていて、診たことがありません。
学会や論文で、そのような卵巣腫瘍がある、という話を聞くレベルにとどまっていて、もし関わることがあれば、診断しなければいけないな、と思っている疾患です。
というのも、見つかるキッカケが「突然の性格変化」なので、なかなか婦人科を受診されることにならないんですよね、、、
そんな訳で、今日は性格が変わってしまう卵巣腫瘍について、論文を交えながら紹介したいと
思います。
まず、肝心の病名としては
抗NMDA受容体脳炎
と言います。
これは、記憶や学習にまつわる脳の中のNMDA受容体という部分を障害してしまうために、さまざまな神経症状が出る病気です。
2008年には国内で100名の報告がありましたが、その9割は女性であり、年齢の中央値は23歳でした。
また、その60%には卵巣腫瘍の一種である「奇形腫」を合併すると言われています。
早めに卵巣腫瘍を見つけて摘出してしまうことが、その後の経過に最も良いと言われているので、婦人科医としては頭に入れておきたい疾患です。
典型的な症状の出方としては、まず最初に発熱や頭痛、体のだるさのような風邪症状が出ます。
次に、無気力、無関心、うつ、不安などの感情障害が始まり、さらに幻覚や妄想など統合失調症のような症状が急激に進みます。
そして、今度は逆に動きがなくなって、言葉も喋らなくなり、周りからの刺激にも反応しない状態が出てきます。
また、口や手が自分の意図しない動きをし始めることもあります。
以上のように、今まで何ともなかった女性が、急に性格変化をきたした場合には、卵巣腫瘍の合併がないかどうかを考えないといけない、という疾患について説明しました。
なかなか性格変化で婦人科を最初に選ぶことはないと思いますが、近くの方に急な性格変化を認めた場合は、婦人科受診も検討してもらえればと思います。