東日本橋レディースクリニック

東日本橋にある駅チカクリニックです。診察中には説明しきれない事を中心に女性医療に関する事を書いています。

HPVワクチンが不妊症の治療になる可能性

Clinical and prognostic significance of human papillomavirus DNA in the sperm or exfoliated cells of infertile patients and subjects with risk factor... - PubMed - NCBI

 

こちらの論文では、290人の男性を対象にHPV感染と不妊に関する検証をしています。

 

290人の中には、コンジローマのある方が26人、パートナーがHPV感染している方が66人、不妊治療中の方が108人、そう言ったものが何もない対照群となる方が90人含まれています。

 

それぞれの方達の精子へのHPV感染率を調べると、コンジローマ群:53.8%、パートナーがHPV感染群:40.9%、不妊群:10.2%、対照群:2.2%という結果でした。

 

不妊治療を受けている男性では、治療を受けてない方に比べてHPV感染の確率が高いことが伺えます。

 

Correlation between HPV sperm infection and male infertility. - PubMed - NCBI

 

また、こちらの論文では1138人の男性を対象に調査し、全体では12.48%がHPV感染していましたが、不妊男性では17.4%だったのに対し、不妊ではない男性では6.7%という結果でした。

 

また、精子の運動率や正常形態率もHPV感染群では低いことがわかりました。

 

このように、HPV感染が男性不妊と関連している可能性があります。

 

そこで、次の論文ではその治療に関して紹介しています。

 

Human Papillomavirus Prophylactic Vaccination improves reproductive outcome in infertile patients with HPV semen infection: a retrospective study. - PubMed - NCBI

 

この論文では不妊治療中の方の中から精液にHPV感染している方を対象に選び、4価のHPVワクチン(ガーダシル)を接種したら妊娠できるかどうかを検討しています。

 

対象となったのは、2013年から2015年にかけて不妊治療中のカップルの中、精液にHPV感染が認められ、精子数が4000万以上ある25歳から40歳の151人の男性です。

 

彼らをワクチン接種を受ける79人と、ワクチン接種を受けない72人に分けて検討しました。

 

その結果、ワクチン接種群では接種半年後、1年後にHPV感染の確率は低下し、精子の運動率が改善していました。

 

全体で41人が妊娠し、そのうち30人はワクチン接種群、11人はワクチン非接種群でした。確率でいうと、38.9%と15%であり、ワクチン接種群で明らかに妊娠確率が高い結果となりました。

 

また、ワクチン非接種群の11人の妊娠のうち、7人が流産し、4人が出産したのに対し、ワクチン接種群では1人が流産し、29人が出産していました。

 

以上のことから、精液にHPV感染している男性にHPVワクチンを接種すると、妊娠率が上がり、妊娠した場合の出産率も高くなる結果が読み取れます。

 

女性側は25歳から35歳、BMI:18〜30、クラミジア・淋菌・トリコモナス・細菌性腟症がないこと、卵巣・卵管手術を受けていないこと、子宮頸がん検査で引っかかったことが無いこと、子宮内膜症を指摘されていないこと、骨盤内感染症になった事がないこと、PCO(多嚢胞性卵巣症候群)ではないこと、子宮筋腫やポリープがないこと、喫煙してないこと等、相当な数の条件が必要となります。

 

トータルで151人と数が少ないことや、女性側にも相応の条件が必要なこともあり、すべての方にとってHPVワクチンが不妊治療の一つになるとは言い切れませんが、条件さえ合えば試してみる価値は十分あるのではないか、と思える結果でした。

 

精液に対するHPVの検査自体が出来るかどうはクリニック次第かと思いますが、気になる方は一度調べられてはどうでしょうか?

 

(HPVワクチンは若年女性が接種するものと思われがちですが、HPVというウィルスは中咽頭癌やコンジローマなど、男性自身にも関係するウィルスであり、特に精液への感染とは関係なく男性が接種するのも一つの手だとは思います)