東日本橋レディースクリニック

東日本橋にある駅チカクリニックです。診察中には説明しきれない事を中心に女性医療に関する事を書いています。

お産の後の失禁について

経腟分娩の時に「切開を入れる」というのを聞いたことがあるかと思います。

 

これは、腟の拡がりに対して赤ちゃんの頭が大きいと、なかなかうまく出てこれないため、皮膚の部分を切開して、出口を広げてあげる方法になります。

 

経産婦さんであれば、一度赤ちゃんの頭が通っていることもあって、皮膚がしっかり伸びて、特に切らなくても大丈夫なことが多いのですが、初産婦さんだと切ることが多くなっています。

 

先ほど説明したように、皮膚を切らないとなかなか赤ちゃんが出てこないことになるのですが、それ以外のメリットもあるため、こちらで紹介したいと思います。

 

Episiotomy in vacuum-assisted delivery affects the risk of obstetric anal sphincter injury: a systematic review and meta-analysis - ScienceDirect

 

こちらの論文では、15の論文を調べたところ、中外側会陰切開もしくは側方会陰切開を行うことで、初産の妊婦さんが吸引分娩を受ける際の肛門括約筋断裂リスクを0.53倍に減らすことができました。

 

肛門括約筋というのはオナラを我慢したり便を我慢したりする時に力を入れる肛門周囲の筋肉になります。

 

この筋肉が切れてしまうと、産後の便失禁の原因にもなりますので、出来るだけ筋肉が切れないようにしたいところです。

 

この論文で示されたように、中外側と言って斜め方向や、側方といって真横方向に切ることで、腟が広がる方向を肛門方向から逃すことができ、結果として肛門括約筋を守ることが出来ます。

 

Early pelvic floor muscle training after obstetrical anal sphincter injuries for the reduction of anal incontinence - ScienceDirect

 

そうは言っても、やはり肛門括約筋が切れてしまうことがあり、こちらの論文では、肛門括約筋が切れた場合について調査しています。

 

経腟分娩の0.5〜5%に肛門括約筋断裂が指摘されていて、そのうち30〜40%の方は分娩後の比較的早期に便失禁を伴うと言われています。

 

そこでこの論文では、230人の肛門括約筋断裂と診断された女性を対象に調査しました。調査期間中に19名(8.3%)は調査対象から外れました(アンケートによるフォローをしていたので、アンケートが返ってこなくなったのだと思われます)

 

一方のグループは、分娩後6〜8週間以内に骨盤会陰のリハビリを開始しました。そして、もう一方のグループでは、分娩後30日以内と言うかなり早期からリハビリを開始しました。

早期から開始するリハビリとしては、骨盤底筋運動が挙げられるます。これは、おならが出そうになった時に力を入れて我慢する筋肉を鍛える方法です。1日に何度もオナラを我慢する動作を繰り返すことで、筋肉が鍛えられるようになります。

 

その結果、リハビリを早期に開始した方が、ガスが漏れる確率は0.51倍、液状の便が漏れる確率が0.22倍、腹圧性尿失禁が0.43倍になりました。

 

流石に出産直後は痛くてリハビリもできないかと思いますが、痛みの様子を見ながら出来るだけ早く開始することで、失禁のリスクを下げられると言えそうです。