東日本橋レディースクリニック

東日本橋にある駅チカクリニックです。診察中には説明しきれない事を中心に女性医療に関する事を書いています。

妊娠中のむずむず脚症候群について

むずむず脚症候群とは

主に脚(人によっては脚だけではなく腰や背中、腕や手に症状が現れる場合もあります)にむずむずする、ぴりぴりする、かゆみ、痛みなどの強い不快感が現れる症状です。

特に夕方から夜間にかけて症状があらわれる事が多く、睡眠不足の原因にもなりやすい病気です。

自覚症状としては、じっとしたり横になったりしていると脚に(人によっては、腰から背中、腕や手など全身にまで現れる)「むずむずする」、「じっとしていられない」、「痒い」、「針で刺すような」、「アリなどの虫がはっているような」などの感覚が現われます。また「激しい痛み」を感じることも。

 

正確な原因ははっきりしていませんが、妊娠そのものがむずむず脚症候群を引き起こす可能性が指摘されています。

 

そこで今回は、むずむず脚症候群と妊娠の関係について説明したいと思います。

 

Restless legs syndrome and quality of life in pregnant women. - PubMed - NCBI

こちらの論文では、平均年齢28歳の妊婦さん250名を対象に調査しています。平均妊娠週数は26週でしたが、46.4%もの妊婦さんがむずむず脚症候群の症状を訴えていました。症状の軽い人が5.2%、中等度の人が45.7%、重度の人が40.5%、最重度の人が8.6%でした。

 

Prevalence and risk factors for restless legs syndrome during pregnancy in a Northern Italian population. - PubMed - NCBI

こちらの論文では、平均年齢35歳、イタリア人の妊婦さん468名を対象に調査しています。

その結果、122人(20.4%)がむずむず脚症候群の診断基準を満たしていました。

どういった方がむずむず脚症候群になりやすいか検討したところ、35歳以上の人は1.69倍、睡眠不足を訴える人は2.35倍、寝つきの悪い方は1.73倍という結果でした。

 

The prevalence of restless leg syndrome among pregnant Saudi women. - PubMed - NCBI

こちらの論文では、平均年齢30歳、サウジアラビアの妊婦さん517名が対象です。21.3%の方がむずむず脚症候群の症状を訴えており、妊娠初期には13.6%、妊娠中期には14.3%、妊娠後期には24.1%でした。やはり不眠症との関連が指摘される結果となっていました。

 

Prevalence of restless legs syndrome during pregnancy: A systematic review and meta-analysis. - PubMed - NCBI

以上の論文から国や地域、妊娠週数によってある程度、むずむず脚症候群のリスクは変わってくるようです。そこで、この論文では、様々な国から報告されている51,717件の妊娠について調べています。むずむず脚症候群の症状がある人は、全体で21%、ヨーロッパ地域では22%、西太平洋地域では14%、東地中海地域では30%、アメリカ大陸では20%という結果でした。また、妊娠初期には8%、妊娠中期には16%、妊娠後期には22%と、後期にかけて確率が上がってくる結果でした。一方で出産後には4%まで低下することも示されました。

 

以上のように地域差はあるものの、妊娠週数が進むにつれてむずむず脚症候群の症状は出やすくなり、出産が終わることで改善していく、ということが言えそうです。

 

A prospective case control questionnaire study for restless leg syndrome on 600 pregnant women. - PubMed - NCBI

次の論文では、他にむずむず脚症候群のリスクとなるものがないか検討しています。

600人の妊婦さんを調査したところ、むずむず脚症候群の症状を示す群の特徴としては、低い教育レベル・社会経済的レベル、合同家族(結婚した息子たちが共同で生活を送る形態)、甲状腺機能低下症、カルシウム・マグネシウム摂取量の多さ、鉄摂取量の少なさが挙げられました。

また、貧血が進むほど、むずむず脚症候群のリスクは増えており、鉄を摂取することで、そのリスクを減らし、症状の重さも改善することがわかりました。

 

そこで、次の論文では、妊娠中のむずむず脚症候群に対する治療について調べています。

Open-label study of the efficacy and safety of intravenous ferric carboxymaltose in pregnant women with restless legs syndrome. - PubMed - NCBI

この論文では、妊娠後期にむずむず脚症候群の症状が中等度もしくは重度の妊婦さん19人を対象にしています。彼女たちは、フェリチン濃度(貧血の度合いを示す数値)が35μg/l未満、もしくはヘモグロビン濃度(貧血の度合いを示す数値)が11.0g/dl未満でした。むずむず脚症候群の症状の強さは、以下に示すスコアによって評価し、全ての方が20点以上もしくは週に3回以上の症状を示しました。

 

www.myojin-kan.jp

 

ヘモグロビン濃度によって、鉄剤(カルボキシマルトース鉄)を500㎎もしくは700㎎、20分以上かけて静脈注射した結果、上で示したスコアは23から13に減少しました。また、睡眠1時間あたりの四肢を動かす回数も35回から25回に減っていました。その結果、睡眠の質も明らかに改善していました。

 

Intravenous iron sucrose for restless legs syndrome in pregnant women with low serum ferritin. - PubMed - NCBI

こちらの論文でも、人数は少ないですが、妊娠中にむずむず脚症候群の症状がある二人の妊婦さんの検査をしたところ、フェリチン濃度が50μg/l以下であり、鉄剤を注射したところ、数週間後には症状が改善し、睡眠の質も向上したことが確認されました。

 

検討されている人数がかなり少ないので、確定的なことは言えませんが、妊娠中のむずむず脚症候群で、貧血がある方には、鉄剤での治療を検討してもよさそうです。

 

治療せずに放置したからと言って、何か大変な結果につながるわけではありませんが、もし症状がつらいようでしたら、一度相談するようにしてくださいね。