東日本橋レディースクリニック

東日本橋にある駅チカクリニックです。診察中には説明しきれない事を中心に女性医療に関する事を書いています。

生理の量が多い方の選択肢について

貧血が進むほど生理の量が多かったり、夜用のナプキンが数時間で溢れてしまって困る、など日常生活に影響が出る方の場合、何らかの治療が必要になってきます。

 

そこで、今回はそんな生理の量が多い方の治療法について説明したいと思います。

 

  • 現時点で妊娠を考えている方

ひとまず貧血を進めないために鉄剤内服してもらったり、食事面で気をつける必要があります。もし、粘膜下筋腫というものが原因であれば、筋腫を取る手術も選択肢になるでしょう。何より早く妊娠することが生理の量の多さに対する対策にもなるため、早めに婦人科を受診してもらい、不妊の原因になるものがないか、調べることが必要になります。

 

  • 将来的に妊娠を考えている方

上で説明したように、粘膜下筋腫というものが出血の多さの原因になっているのだとすれば、手術をして取ってしまうことも選択肢にはなります。ただし、すぐの妊娠を希望していないのであれば、ピルを飲むことで出血量を減らし、子宮筋腫がある場合には、筋腫が縮む可能性も期待できます。一時的にミレーナというものを子宮の中に入れて、出血量を減らす治療法も選択肢になりますが、下から出産した経験のない方だと、痛みが強くてミレーナを入れられない可能性もあります。

 

生理痛について その4 ミレーナ - 東日本橋レディースクリニック

 

  • もう妊娠は全く考えていない方

ご年齢的に40代になってくると、ピルの副作用である血栓症が心配になってきます。そのため、上で説明したディナゲストか、ミレーナを入れるか、外科的な治療がおすすめとなります。

 

そこでここでは、外科的な治療と薬物治療を比較した論文を紹介したいと思います。

 

Surgery versus medical therapy for heavy menstrual bleeding. - PubMed - NCBI

 

外科的な治療としては、子宮内膜焼灼術(子宮内膜を高熱で焼いてしまうこと)・子宮内膜搔爬術(子宮内膜を全面的に切除してしまうこと)と子宮全摘術、薬物治療としてはディナゲストのような内服薬とミレーナが含まれます。

 

1289人の方を対象に調べた結果ですが、内服薬の治療と比べて、子宮内膜搔爬術の方が術後4ヶ月、2年と時点で出血量をより減らす効果がありました。しかし、5年の時点では両者の効果にあまり違いはありませんでした。

 

これはおそらく内膜搔爬術をしても徐々に組織が再生してしまい、最終的にはもとの出血量に戻ってしまった可能性が原因として考えられます。

 

また、治療による満足度も、術後2年の時点では外科的治療の方が優れていましたが、術後5年ではあまり違いがなくなっていました。

 

ただし、内服治療を継続していた方達のうち、59%は2年以内に、77%は5年以内に外科的治療を受ける結果になっていたのは注意が必要です。

 

次に子宮全摘術とミレーナを比較した場合です。

術後1年の時点での出血コントロールでは、両者とも同等の結果でした。子宮全摘術をすれば、ほぼ出血量はゼロに近いので、ミレーナの効果は相当高いことが窺えます。

 

また、術後5年、10年経過した時点でのQOL(生活の質:ここでは出血量が多くて、どの程度日常生活に影響を与えているかを評価しているのでしょう)については、手術もミレーナも違いはありませんでした。

 

ただし、ミレーナを入れた群のうち、46%は10年経過する中で子宮全摘術を受けていました。

 

以上から言えることは、子宮全摘術は手術に伴う合併症の問題や入院期間を要することなどのハードルがあり、最初に選ぶ選択肢としては、ミレーナや、子宮内膜焼灼術や子宮内膜搔爬術のような比較的合併症な少ない手術が考えられることになります。

 

何年という長い単位で見た時には、ミレーナや内膜に対する手術では出血がコントロールできなくなって、最終的には全摘術に至る可能性もありますが、場合によっては全摘術をしなくても済むとも言えますし、年齢によってはそのまま閉経する可能性もあります。

 

このように、生理の量が多すぎて困っていて、もう妊娠を考えていない、という方は、いきなり子宮を取るという選択肢の前に、ミレーナや内膜に対する手術という選択肢もあるのだと知ってもらえれば幸いです。