東日本橋レディースクリニック

東日本橋にある駅チカクリニックです。診察中には説明しきれない事を中心に女性医療に関する事を書いています。

子宮腺筋症の手術は開腹?腹腔鏡?

生理痛が酷くなる原因として子宮内膜症というものがあります。

 

これは、子宮の内側にある子宮内膜という組織が、子宮の外に飛び出してしまって、痛み物質を出すために生理痛が強くなるものです。

 

そんな子宮内膜が子宮の筋肉の中に入り込んでしまい、子宮そのものを大きくしてしまうのが「子宮腺筋症」という状態で、ひどい生理痛や生理の量が多くなって貧血の原因になったりします。

 

ピルのようにホルモン治療でコントロールすることもありますが、今回は外科的な治療法について説明したいと思います。

 

先程も説明したように、子宮腺筋症というのは子宮の筋肉が分厚くなる状態を言います。そのため、手術ではその分厚くなった部分を切り取って、残った筋肉を縫い合わせる事になります。

 

やり方としては、お腹を大きく切って手術する開腹手術と、1cm前後の傷を何箇所かつけて手術する腹腔鏡手術に大きく分かれてくるのですが、その2つを比較した論文がこちらです。

 

Comparisons of the efficacy and recurrence of adenomyomectomy for severe uterine diffuse adenomyosis via laparotomy versus laparoscopy: a long-term r... - PubMed - NCBI

 

この論文では、2011年から2018年にかけて子宮腺筋症を切除する手術を受けた148人について調査しています。

そのうち、72人は腹腔鏡手術、76人は開腹手術でした。

 

その結果、術後6年経過した時点での手術有効率は腹腔鏡手術が62.1%だったのに対し、開腹手術では75.0%でした。

また、再発率は腹腔鏡手術が27.8%だったのに対し、開腹手術では17.1%でした。

 

子宮腺筋症を含む子宮内膜症というのは、術後の再発率が高く、手術の後も継続して治療する必要があります。そこで、この論文ではGnRHaという薬、ミレーナという薬、ピルについて調べています。

 

GnRHaというのは、一時的に閉経状態に持ち込むための薬で、毎日内服するタイプ、点鼻薬、月に一度程度注射するタイプに分かれてきます。早い段階で閉経状態になり女性ホルモンが低くなるため、薬を使っている期間は骨密度が下がることになります。そのため、この薬の使用限度は一応6ヶ月ということになっています。

使い方によっては、6ヶ月以上の使用期間も可能なのですが、それはまた別の機会に説明したいと思います。

 

ミレーナについてはこちら

生理痛について その4 ミレーナ - 東日本橋レディースクリニック

 

こういった治療を腹腔鏡手術、開腹手術のそれぞれの術後治療として行いました。

 

まず、腹腔鏡手術での再発率は、術後にGnRHaに加えてミレーナかピルを使った場合は9.8%、GnRHa単独では51.6%でした。

開腹手術での再発率は、GnRHaに加えてミレーナかピルを使った場合は6.5%、GnRHa単独では33.3%でした。

 

また、子宮腺筋症以外の子宮内膜症を伴う方での再発率は腹腔鏡手術55%、開腹手術36%だったのに対し、子宮内膜症を伴わない方では腹腔鏡手術17.3%、開腹手術7.8%という結果でした。

 

以上のことから、子宮腺筋症の手術方法に関して、術後数年の評価を考えると、腹腔鏡手術より開腹手術の方がややメリットがあるかな、という結論でした。

その原因としては、開腹手術だと術者が自分の手で触りながら腺筋症を確認できるため、かなりしっかりと切除できること。一方で腹腔鏡手術では、かなり細かい部分まで拡大してカメラに写し、細かい作業には向いているのですが、腺筋症の組織そのものを手で触れる事ができず、視覚情報だけでは子宮腺筋症の組織を取り残す部分が大きくなる事が原因かと思われます。

 

いずれにせよ、術後の治療方法をしっかり選ばないと、術後再発率はかなり高くなってしまうのは明らかなようです。

 

もし、子宮腺筋症で手術を受ける方、受けた方は、参考にしてみてください。

 

なお、この論文は手術方法による違いを比較した論文なので、最も大きな影響を与えるのは術者の技術になります。そのため、この論文のデータが日本国内全ての病院に当てはまるものではないため、ご注意いただければと思います。