東日本橋レディースクリニック

東日本橋にある駅チカクリニックです。診察中には説明しきれない事を中心に女性医療に関する事を書いています。

自閉症の予防策

今回は、妊娠中のサプリ内服が子供の自閉症スペクトラム障害にどのような影響を与えるか、という論文をいくつかご紹介したいと思います。

 

まず、1つ目はこちら。

 

https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/article-abstract/2726608

 

こちらの論文では、自閉症スペクトラム障害の子供の弟や妹が、自閉症スペクトラム障害になる可能性を下げるために、出産前にお母さんがビタミン剤を内服する効果について検討しています。

 

対象となったのは、2006年から2015年に生まれた241名の子供です。140名(58.1%)は男の子で、101名(41.9%)は女の子でした。

 

平均年齢3歳の時点で評価したところ、妊娠4週にビタミンを内服していたお母さんからは、自閉症スペクトラム障害の子が18名(14.1%)生まれたのに対し、その時期にビタミンを内服していなかったお母さんからは37名(32.7%)の自閉症スペクトラム障害の子供が生まれました。

 

つまり、妊娠初期にビタミン剤を内服することで、自閉症スペクトラム障害の確率を半分に減らす事ができる、という結果でした。

 

また、自閉症に関する症状の強さも、ビタミン剤内服によって軽くなっており、認知機能に関するスコアは高くなるという結果も確認できました。

 

以上のことから、お兄ちゃんやお姉ちゃんが自閉症スペクトラム障害を持つお母さんにとって、妊娠初期にビタミン剤を内服することは、次のお子さんが自閉症スペクトラム障害になる確率を下げたり、症状を軽く抑える効果が期待できる可能性があります。

 

論文の結論として、具体的なビタミン剤の量や種類に関して、さらなる検討が必要である、とされており、具体的に何を摂取すればいいかは断定できない結果となっています。

 

次の論文はこちら

 

Antenatal nutritional supplementation and autism spectrum disorders in the Stockholm youth cohort: population based cohort study. - PubMed - NCBI

 

こちらの論文では、スウェーデンにおける273,107組の母子ペアについて、お子さんが4歳から15歳の時点で評価しました。

 

対象となったのは、マルチビタミン、鉄、葉酸のサプリを妊娠中に摂取していたかどうかです。

 

その結果、マルチビタミンを摂取している群では、自閉症スペクトラム障害の確率が0.26%(61,934名のうち158名)だったのに対し、サプリを何も摂取していない群では、0.48%(90,480名のうち430名)でした。

 

葉酸や鉄のサプリを摂っても摂らなくても、マルチビタミンのサプリを摂ることで、自閉症スペクトラムの確率は0.69倍になっていました。

 

以上のことから、妊娠中にマルチビタミンを摂取することは、子供の自閉症スペクトラム障害のリスクを下げる可能性があると言えそうです。

 

Association of Maternal Use of Folic Acid and Multivitamin Supplements in the Periods Before and During Pregnancy With the Risk of Autism Spectrum Di... - PubMed - NCBI

 

次の論文では、2003年から2007年に生まれた45,300人のイスラエルの子供たちが対象で、お母さんは葉酸やビタミンA.B.C.Dの入ったマルチビタミンを妊娠前から内服していました。

 

45,300人の子供のうち、女の子は22,090人、男の子は23,210人で、平均年齢は10歳、572人(1.3%)が自閉症スペクトラム障害と診断されました。

 

その結果、お母さんが妊娠前から葉酸マルチビタミンを内服していると、自閉症スペクトラム障害の確率は0.39倍になっており、妊娠期間中の内服でも0.27倍になっていました。

 

それぞれを細かく見ていくと、妊娠前の葉酸摂取では0.56倍、妊娠中の葉酸摂取では0.32倍、妊娠前のマルチビタミン摂取では0.36倍、妊娠中のマルチビタミン摂取では0.32倍という結果でした。

 

この論文の結果では、葉酸にもマルチビタミンにも自閉症スペクトラム障害のリスクを下げる効果があると言えそうです。

 

The association between maternal use of folic acid supplements during pregnancy and risk of autism spectrum disorders in children: a meta-analysis. - PubMed - NCBI

 

葉酸に関してはコチラの論文でも検証されています。

この論文では4,514人の自閉症スペクトラム障害の子供について検証したところ、妊娠中の葉酸摂取により、自閉症スペクトラム障害のリスクが0.771倍になった、という結論でした。

 

[Association between maternal folate supplementation during pregnancy and the risk of autism spectrum disorder in the offspring: a Meta analysis]. - PubMed - NCBI

 

こちらの論文でも、4,459人の自閉症スペクトラム障害の子供と1,225,835人の対照となる子供とを比較したところ、妊娠中の葉酸摂取で自閉症スペクトラム障害のリスクは0.798倍になっていました。

 

人種別で検討してみると、アジア系では0.664倍、ヨーロッパ系では0.817倍という結果でした。

 

以上、いくつかの論文をご紹介しましたが、いずれも妊娠前、妊娠中の葉酸マルチビタミンの摂取により、子供の自閉症スペクトラム障害のリスクをある程度下げる事ができるのではないか、という結論でした。

 

葉酸自体は妊娠前から摂取することで二分脊椎という先天奇形の確率を下げる事ができるのは明らかになっています。

 

そのため、今回ご紹介した論文も踏まえて、やはり妊娠前からの葉酸摂取は大切であり、合わせてマルチビタミンも摂取した方がいいのではないでしょうか。

 

一点だけ注意点があるとすれば、ビタミンAの摂取量が多すぎるのはいけないので、そこだけは気をつけるようにしましょう。